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≫ 刑事手続きの流れ
1,身柄事件
@ 逮捕は最大72時間、勾留は最大20日間です。勾留期間の終了日を勾留満期
といいますが、その日に起訴するか否かが決まります。
A 不起訴又は略式起訴となった場合には、勾留満期に釈放されます。
B 起訴されると、刑事裁判が始まります。専門家は、これを公判手続と呼ん
でいます。分かりやすく言うと、テレビドラマなどであるような、法廷で
行われる正式な裁判です。これに対して、法廷で裁判を開かずに罰金刑を
言い渡してしまうものを略式裁判と呼んでいます。
C 起訴されて公判手続きが行われると、判決が出されるまでに2〜3ヶ月は
かかると思ってください。特に、国選弁護人の選任が必要な場合には、選
任に必要な期間も見越して期日を入れる関係で、速やかに裁判が始まりま
せん。迅速な裁判を希望する場合には、私選弁護人を選任するのが無難で
す。
D 証拠調べが終了すると、次回期日は判決となります。複雑な事件でなけれ
ば、だいたい結審してから1週間〜10日程度で判決が言い渡されます。判
決で、無罪又は執行猶予付きの有罪判決が言い渡された場合には、判決期
日に釈放されます。
E 懲役刑が言い渡されて有罪となり、かつ、執行猶予が付かなかった場合は
、これを実刑と呼び、刑務所に服役することになります。
2,在宅事件
在宅事件とは、逮捕・勾留されずに、犯罪捜査が進められ、場合によっては起訴されます。捜査段階で逮捕・勾留されていなければ、起訴後も通常は勾留されずに在宅で裁判を受けることになります。身柄事件との違いは、逮捕・勾留されない点くらいで、あとはほぼ同様の流れになります。
1,逮捕・勾留
逮捕と勾留では、身柄拘束期間が異なります。逮捕の場合は、最大72時間(3日)と短いのに対して、勾留は原則10日間、延長されればさらに10日間、合計20日間の長期に渡って身柄拘束されることになります。
2,不起訴
起訴する権限は、検察官が独占的に有しています(起訴独占主義)。また、検察官は、起訴するか否かについての裁量権を有しており、諸般の事情から起訴しないこともできます(起訴便宜主義)。検察官の裁量で起訴しないこととなった場合、これを不起訴処分といいます。
不起訴となる事情としては、様々な場合が考えられますが、@証拠が不十分な場合、A証拠はかたいが、事案が軽微であり被害感情も強くなく犯人も反省いるため、いわば温情的に不起訴となる場合も少なくありません。不起訴となれば前科にはなりませんが犯罪歴は残ります。
3,略式起訴
法廷で裁判を開かずに、書類だけで判決を下す場合がありま,す。これを略式裁判といい、このような裁判を検察官が求める場合、これを略式起訴といいます。罰金刑を下すのが相当な軽微な事案で利用されます。
もっとも、被告人には、正式な裁判で争う権利があり、略式裁判ではそのような被告人の権利行使の機会が奪われるので、被告人の同意が必要です。したがって、被告人が争っているいわゆる否認事件では、略式裁判が利用されることはありません。
略式裁判に同意し略式起訴されると、勾留の満期日(勾留の最終日)に釈放され、裁判所から言い渡された罰金を納付することになります。
4,被疑者・被告人
被疑者とは、犯罪の疑いをかけられている者を言います(マスコミが使用する“容疑者”という概念と同じですが、容疑者という表現は正しい法律用語ではありません)。そして、起訴されると、被告人になります。
5,被害届
被害届とは、被害者が犯罪の被害にあった事実を警察等に届け出ることを言います。注意して欲しいのは、被害届自体は、犯人の処罰を求めるものではないという点です(この点で、後述の告訴とは違います)。
したがって、法律の素人が使う“被害届の取下げ”という表現は、不正確な表現です。被害者が勘違いして行った被害届でない限り、被害届は取り下げようがないからです。法律の素人が被害届の取下げと通常呼んでいるのは、示談等の成立により被害者が検察庁や裁判所に寛大な処分を求めることを指します。
6,告訴
告訴とは、被害者による犯人に対する処罰の請求を言います。被害者が明確に処罰を求めている点で、単に犯罪被害に遭った事実を報告するに過ぎない被害届と大きく異なります。
告訴がなされると、警察署や検察官などの捜査機関は、告訴した者に対して、捜査の進捗状況に関して報告する義務を負うなど、負担を伴うことから、通常は、被害者に、(告訴状ではなく)被害届を出させ、処罰意思に関しては被害者の供述調書で代用しているようです。告訴は、被害者による処罰の請求ですから、取下げが可能です。
7,親告罪
親告罪とは、被害者による告訴がなければ裁判できない犯罪を言います。代表的なものとしては、被害者のプライバシー保護の観点から強姦罪や強制わいせつ罪が親告罪とされています。また、重大事件ではないことから名誉毀損罪や器物損壊罪も親告罪とされています。
前述したとおり、一般の刑事事件に関しては、捜査機関は被害届等で代用しており告訴状を受理することはまれですが、親告罪に関しては、告訴がないと裁判できないことから、通常は、告訴状を受理して捜査をします。
8,保釈請求
起訴された被告人は、保釈請求することができます。保釈請求の通常の流れを解説すると、保釈請求書を裁判所に提出⇒反対意見を述べないように担当検事に根回し⇒裁判官と面接し、保釈してもらえるように交渉⇒保釈がOKの場合、裁判官と保釈金額の協議⇒保釈金の納付⇒保釈、となります。
弁護人が保釈請求をすると、裁判官は必ず検事に意見を求めるので、予め検事に根回しして、反対意見を述べないようにお願いします。検事が反対意見を述べなければ、保釈が求められる可能性は格段に大きくなります。
検事が反対意見を述べると、逆に保釈は難しくなりますので、その場合に備えて、裁判官と面接し、直接説得する必要があります。
保釈金の相場は、一般に200万円程度と言われているようですが、厳密には保釈金の相場を語るのは困難です。なぜならば、保釈金は、被告人が逃亡したり証拠隠滅等をしないように担保として納付させるものなのですが、どの程度の金額であれば担保として十分であるかは、その被告人や親族らの経済力によって大きく異なるからです。大雑把に言えば、お金持ちほど保釈金が高額化する傾向にあります。
保釈請求が却下された場合、準抗告という不服申立てができますが、保釈請求を再度やり直すという方法もあります。我々の経験では、準抗告よりも再度の保釈請求のほうが認められやすいというのが率直な印象です。
準抗告の場合だと、被告人の保釈を認めるためには、裁判所は先になされた却下決定を“違法”と宣言しなければならないのに対して、再度の保釈請求の場合には先の却下決定を違法と宣言しなくてよいからだと推測されます。
9,示談と贖罪寄付
示談とは、加害者と被害者との間における損害賠償についての和解契約で、あくまでも民事上の紛争を解決するものです。刑事裁判とは直接関係がないことに注意してください。
もっとも、民事上の紛争が解決しており、特に被害者が宥恕の意思表示(犯人を赦し、犯人に対する寛大な処分を求めること)がなされていると、刑事裁判で言い渡される判決に影響します。したがって、通常の民事上の和解契約と異なる点は、被害者が犯人を赦すという内容の条項を盛り込む点です。
これに対して、贖罪寄付とは、読んで字のごとく、罪を贖うためになされる寄付で、被告人が経済的痛みを伴ったことを情状に有利な資料として裁判所に提出することを目的とします。薬物事案などの被害者のいない犯罪において利用されるのが典型的ですが、被害者がいても示談に応じてもらえない場合などにも利用されます
10,前科
前科とは、犯罪歴のうち、有罪判決を受けたものを言います。有罪判決であれば前科となり、実刑判決であるか執行猶予付判決であるかを問いません。また、有罪であれば前科となるので、懲役刑を言い渡された場合だけでなく、罰金刑も前科となります。
これに対して、逮捕・勾留されたが不起訴となった場合、処分保留で釈放された場合、少年時代に少年院送致歴があるに過ぎない場合には、前科とはなりません。
しかしながら、前科だけが過去の犯罪歴として残るのではなく、起訴されなかったものも含めて全ての犯罪歴が残ります。よく前科がつくと、公的な機関に犯罪歴として残ってしまうことを気にする人がいますが、あまり意味があることではありません。
なぜなら、前科とならなくても犯罪履歴として残るからです。逆に、たとえ前科があったとしても、前科は極めて高度なプライバシー事項に該当するため、前科情報が外部に漏れることはまずありません(万が一漏れた場合、国賠訴訟を提起することも可能です)。したがって、真面目に生活していれば、私生活上は何らの支障もありません。
11,求刑
求刑とは、当該被告人に対して言い渡されるべき刑についての検察官の意見です。公判手続の最終日に論告の中で述べられます。 求刑は、あくまでも検察官の意見にすぎず、裁判官を何ら拘束するものではありません。その意味では、弁護人が弁論要旨の中で述べる意見と同格です。
しかしながら、検察官の求刑は、現実の刑事裁判では裁判官の判断に対して大変大きな影響力を持ちます。比較的短期の懲役刑が求刑された場合、求刑とおりの刑が言い渡されることがほとんどで、また、凶悪事件で相当長期の懲役刑が求刑された場合でも、判決が求刑を大きく下回ることは滅多にありません。担当の裁判官が、検察官による控訴を嫌がるためと推測されます。
担当裁判官にもよりますが、一般論として言えば、裁判所は、必ずしも中立的とは言いがたく、かなりの程度検察側に偏っているというのが実態のようです。
1,覚せい剤取締法違反等の薬物事犯
薬物事案では、被害者が存在しないため、示談交渉は行われません。もっとも、贖罪寄付をして、情状の資料にすることはありえます。
否認事件について、所持や譲渡しに関しては無罪判決が出ることも稀にありますが、自己使用については、体内から検出された尿が証拠となっているため、無罪判決を勝ち取るのは極めて困難です。
自白事件の場合、弁護活動の中心は、あくまでも情状立証となります。家族にお願いして情状証人として今後の監督を誓約してもらったり、勤務先の社長に雇用を約束してもらうことが寛大な処分を引き出すために有益です。
2,傷害事件
傷害事件においては、被害者の診断書が決め手になります。診断書があれば、加療10日程度の軽傷であっても、犯人が逮捕されることは珍しくありません。初犯であれば、通常罰金刑ですむ場合が多いようです。
傷害事件では、被害者との示談交渉が極めて重要になります。特に別件で執行猶予中に傷害事件を起こしてしまった場合、起訴前に示談が成立すれば通常不起訴となりますが、示談が成立しないと起訴されて前刑の執行猶予が取り消されると同時に、傷害事件についても実刑が言い渡され、2つの罪で刑務所に服役することになるからです。多少被害者にぼられることも覚悟して、できれば起訴前に示談をまとめたいものです。
3,窃盗事件
窃盗事件における弁護活動も被害者との示談交渉が中心となります。窃盗事件では、傷害事件と異なり、通常慰謝料は問題となりませんから、盗んだ物の被害相当額を弁償すれば示談がまとまることが多いと思います。したがって、被害者から不当に高額な示談金を要求されることは滅多にありません。
もっとも、窃盗に対する刑事処分が軽いか重いかは千差万別でいちがいには言えません。被害額だけではなく、その犯行態様(盗み方)も重要となるからです。例えば、不特定多数の者が出入りできるスーパーなどでのいわゆる万引き事案では、初犯の場合、不起訴となることが多いようですが、他人の住居に侵入して行ういわゆる空き巣は、万引きに比べると悪質で、初犯でも起訴されることがあります。
4,痴漢事件
痴漢は、刑法上は、強制猥褻罪に該当するのですが、初犯では、相当悪質な事案でない限り、各都道府県が定めるいわゆる「迷惑防止条例違反」として処理され、罰金刑が言い渡されることが多いようです。もちろん、繰り返すと、強制猥褻罪として起訴され、重く処罰されることになります。
痴漢事件では、被告人が犯行を否認するいわゆる否認事件も多いようです。また、実際に無罪判決が言い渡される場合も、他の事件と比べると多いと思います。痴漢事案でいわゆる冤罪が多いのは、事案の性質上、物証がなく、また、目撃者もいないため、被害者の供述が決め手となるからです。そして、被害者の供述と被告人の供述が食い違ったとき、一般的に被害者の供述が信用される傾向にあります。
被疑者・被告人が罪を認めている場合、弁護活動の中心は示談交渉となります。そして、痴漢事件で支払われる示談金は、高額化傾向にあるようです。
5,振り込め詐欺事件
振り込め詐欺事件では、巨額な被害額に及ぶことも珍しくなく、また、大きな社会問題となっていることから、一般に検察官から極めて長期の懲役刑を求刑される傾向にあります。相場的には、主犯格では10年以上、末端の共犯者でも5年以上の求刑がなされているようです。
一般に、詐欺などの財産罪では、被害者に弁償して示談が成立すれば、検察官の求刑も低くなり、判決でも執行猶予がつくのが普通です。しかし、振り込め詐欺事件では、被害額全額が弁償されても検察官が求刑を下げないことも多く、また、言い渡される刑も実刑判決がほとんどです。
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